片山の家見学と相談
施工から1年前のことでした。
フランス帰りの、上品で、素敵なご夫婦が、
「片山の家」を見にこられました。
きっと「どれどれ、参考までに・・・」
と、思われて見に来られたことと思います。
なぜなら、その方はもうすでに、
ある大手メーカーさんと契約まで進み、
大金の手付も支払われていました。
建築確認申請も下りて、着工のところまで進めておられたのです。
それにも関わらず、片山の家を見て、
「目が点になった!」と驚愕されていらっしゃいました。
詳しくお話をお聞きすると、
大手メーカーさんに、望みを全て反映してもらったはずなのに、
間接照明は希望通りに反映できないものがあったりなど、
ところどころでしっくりいかないモヤモヤしたものがあったそうで、
100%満足いくお家って無理なのかなと諦めかけていたようです。
そんなときに、ご自身がまさに望まれていた空間が
目の前にあったため、衝撃を受けたそうです。
片山の家を目の当たりにしたことで、
自分達が何に引っかかっていたかがここで明確になったのです。
大手メーカーさんの営業マン、
インテリアコーディネーターさん、
そして設計士さんとも、何度も打ち合わせを
重ねて設計プランが完成しておりましたが、
様々な小さな妥協ポイントの積み重ねが、
本当にこのまま形になってもいいのかと
ひっかかるものがあったようです。
奥様はお菓子づくりの先生。
新築を機に、お家でお菓子作りをしたい、
という望みがあります。
さらには、1年半前、結婚され、この家が完成した時から、
ご主人のお母様と同居されており、
二世帯住宅で今は3人。
しかし将来は、2人、子どもがほしい
と考えていらっしゃいます。
わたし(片山友見)は、お話を聞きながら、ムムム・・・
っと思いました。
ご本人の望まれている未来に対してこのプランは少し違う。
持ち前のプランナーとしての想いがムクムクと
湧いてくるのを押さえることができませんでした。
家を建てる時、どのような家にしたいのかを考える前に、
まずどんな暮らしをしたいのか、
そのイメージが家づくりの基本になります。
望む暮らし方に合わせて、住まいを設計をしていかないと、
本当に望む理想の家はつくることができません。
どんな家庭を築きたいのか?
子どもは何人ほしいのか?
どんな子どもに育ってほしいのか?
そういった人生設計が必要なのです。
その人生設計には、私、片山友見が開発した
夢シート(夢育マップの原形)を活用すると、
理想や夢が整理されて、優先順位が明確になるのです。
わたしは、お客様とのヒアリングの際は、いつも根掘り葉掘り お聞きしますので、
最初はとまどわれる方もいらっしゃいます。
しかし、お客様の望みを根こそぎ全て引き出さなければ、
本当に望まれている住まい(プラン)はできません。
少しでも妥協するものがあったり、完全に出し切っていなければ
どこかしら不満やストレスが出てきます。
Y様は私のヒアリングをもとに立てたプランを大変気に入ってくださりました。
そして、大手メーカーさんとの契約を破棄し、弊社と契約という運びとなったのです。
奥様の夢とキッチンのモヤモヤ
大手メーカーさんのプランは、『家でお菓子作りの教室をしたい』
という奥様の夢をかなえたプランです。
600万円もかかるキッチンです。
見た目も素敵で機能も申し分ありません。
しかし、このままの間取りでは後々困るのでは?と予測できます。
というのも、夢シートより導き出された奥様の一番の望み、
それは、『家庭円満である』ということなのです。
それならば、これから同居されるお母様と家族が
仲良くなれるような間取りの家であることが理想です。
望みを叶える仲良くなれる間取りは、
お菓子教室のための
週に2人から6人の生徒さんが中心に考えられるのではなく、
LDKが育児の場であり、家族の憩いの場になるように考えられるべきです。
それなのに、でーんと、キッチンが最高の場所をとっていたらどうでしょう?
ご主人はどこでくつろがれるのでしょう。
また、孤立しているキッチンに入ってしまったら、
子どもが、リビングで何をしているのか見えなくなってしまいます。
第一に、キッチンは孤立する場所ではなく、
誰がどこにいても目配りや対話ができる
コミュニケーションセンターであることが理想です。
第二に、間取りとしてはあれもこれもと考えてしまい、
でこぼこしてしまいがちですが、
掃除の面でも、シンプル・イズ・ザ・ベスト!
究極はこれにつきます。
第三に、風の流れは気の流れ!風が通ること。
夢育の家では気の流れも考えた間取りをプランニングします。
以上のことをふまえながら
奥様が第一に考えられている家庭円満を最優先に、
いかに快適に、いかに心地よくLDKに家族が集えるかを
一番に考えたプランを立てました。
一階には、お父さんの居場所!
まずはじめに、お父さんの居場所をつくりましょう。
女性が一歩下がるのが当たり前。
という時代もありました。
現在は、女性が家庭の実権をにぎることが
当たり前になりつつあります。
家庭によってはお父さんが粗大ゴミ扱いされたりします。
お父さんの存在感が薄かったら、
子どもが思春期になって
言うことをきかなくなった時、
お決まりの「お父さんからも何か言ってよ!」
のひとことがお母さんから出た時、
お父さんが何を言っても、
言うことをきくわけがありません。
そうならないために、ちょっとした秘訣があります。
・お父さんとのコミュニケーション量がふえる。
・お父さんが仕事で不在の時も、なぜか存在を感じる。
・子ども達が、自然とお父さんを尊敬してしまう。
それがお父さんのリビングでの居場所です。
お客様と打ち合わせを重ねる中で、
毎回、お父さんの居場所を確保することを提案します。
この提案をすると、意外だ
という顔をされる方が多いです。
夢育の家の願いは、
親も子も、夫も妻も、
一人ひとりが健康で幸せに暮らせることです。
そのためには、お父さんにとって、
居心地のよい居場所をつくることが大切です。
お父さんが家の中でよい時間を過ごしてくれることは、
家庭円満の秘訣でもあります。
それは、お母さんである女性が、
後々楽になることにもつながります。
ここのお宅は、印の所をお父さんの場所!
と決めました。
印のところは、キッチンで美味しいものをこしらえてくれる奥様や、
外から帰ってくる子どもたちが一番よく見える場所です。
また、縁側を通じて、お母様(おばあちゃま)の気配も感じます。
そんな1等席が、お父様の席なのです。
これは、わたしの実家でも、片山家でも実際にしていました。
「ここはパパの席」と決められているので、
子どもが座っていても、お父さんが帰宅すると、
慌てて席を立ってしまうのです。
お父さんを尊敬する家庭に、悪い子は育たない
といいます。
リビングダイニングにお父さんの居場所をつくることは、
今すぐ実践できる夢育の一つです。
お父さんの居場所づくり。
これは、面白いほど効果があるので、
ぜひお試しください。
孫とお母様をつなぐ架け橋になる縁側
おばあちゃん、おじいちゃんがいる家の子は、
おもいやりのある、やさしい子に育つ!
夢育ではそう考えます。
この家は、3世代一緒に暮らせるよい環境です。
これを生かすために
子どもたちが、おばあちゃんのお部屋に
行き来しやすい間取りにしましょうと
縁側からもお部屋に入れるように考えました。
先々のことを考えて
間取りをプランニングする上で避けられないことは、
老いた時のことです。
実際に、お客様から、
手すりが必要になったからと、ご依頼を受けてお伺いしてみると、
手すりが付けられない状態の家が多いのです。
結局補強材を入れる工事が必要になってしまい、
手すりをつけるだけなのに金額がずいぶん高くなってしまいます。
後々のことを考えて、老いたお母様が歩かれる廊下などの壁に、
すべて下地を補強して、後で手すりがつけられるように設計しました。
ここのお宅は、お菓子教室の生徒さんが使うこともあって、
お母様のお部屋からトイレが少し離れてしまいました。
高齢になられた時、手すりがあっても
トイレが遠いなと感じるようになられたら、
収納がトイレに変わります。
最初から給排水だけ施工しておけば、
工事は簡単です。
このように先々のことまで考えて、
間取りのプランを立てます。
お父様(おじいちゃん)の形見と2階のライブラリー
ご主人の亡きお父様は、ある週刊誌の編集長をしておられました。
読書が趣味だっただけに、貴重な本、素晴らしい本がいっぱい。
今では大切な形見、ご主人の宝物です。
もともとのプランは、
お父様の形見の本は書庫の中で管理する、
というものでした。
そんな宝物を書庫にしまいこんでいいのかな?
と、考えて、ホールに本を置くことにしました。
次に生まれてくる子どもたち、孫たちに、
亡きお父様(おじいちゃん)の存在を
知らせるためにも、
毎日通るこのスペースに本を置いて、
本の素晴らしさを感じてほしいと思いました。
夢シートより導き出された、
ご家族のコンセプトも
かしこく本好きの子どもに・・・です。
パソコンも各部屋に閉じこもらずここで使います。
家族会議もここで行われる。
そんなイメージが出来ます。
このホールが多目的に活用されて、
家族がめちゃくちゃ仲良くしている様子が目に浮かびます。
まさに、夢シートから導き出された奥様の一番の願い
『家庭円満である』が二階でも叶うのです。
様々な思いと、たくさんの工夫を巡らせながら、2001年5月に着工し、2001年11月に完成しました。
夢育の家に住んで
完成から8年後、Y様より感想をいただきました。
家の大切さを教えて頂き、快適な暮らしを楽しみ、
心身ともに元気になれる住まいを提案してもらえて、
幸せな暮らしを送っています。
8年経った現在も玄関に入った時に新築のような木の香りがします。
来客が増えました。そして、居心地が良いとおっしゃり、長居される方が多いです。
息子が産まれました。ライブリーのおかげか、本好きの子に育ってます。
出入りしやすいキッチンのおかげで、息子はたくさんお手伝いをしてくれます。
何より家の中で会話が増えました。
本当に毎日が楽しいです。
私(奥様)の暮らしを見て、母が、「建て替えの際はぜひ友見さんにプランニングしてもらいたい」
と言い出して、親子で大変お世話になりました。
友見さんに感謝しています。