『住まいづくり』で大切なこと

「子どもが小学生になるから、
家を増築して、子どもの部屋を造りたい」
と、ご相談に来られたお客様がいらっしゃいました。

うつむき加減で、小さな声を絞るように
お話をされるお客様のことが気になりました。

お客様のお宅に伺うと、
新築したばかりのきれいな外見のお家でした。

でもお家に入ってすぐ、空気のよどみを感じたため、
「窓を開けて空気を入れ替えましょう」
と、窓を開け放させていただきました。

また、部屋の片隅に乱雑にモノが積み上げられ、
いっぱいになって、気がこもっていたため、
「気の流れが溜まってしまっているから、
ここにあるモノをすべて撤去しましょう」

と、片付けのお手伝いをしました。

今回は、このお客様のリノベーションに至るまでの
物語をお話させていただきます。

目次

新築なのにリノベーションを考えたくなる家

初対面で、お客様の元気というか、生きる力が
弱っているという印象を受けました。

お客様のご自宅に伺って、その理由がわかりました。

家事動線が非常に悪いため、
家事の負担が重いだろうということが
簡単に想像出来ました。

また、新築のお家のため、新しくてきれいな設備品や
新品の壁紙、床材などが使われていましたが、
リビングが、家族の集える場所には
なっていませんでした。


お客様は、これらのことに気付かれていないため、
片付けても片付かなくて落ち着かないから、
部屋を増やせば、問題が改善できるのだろうかと
お考えのようでした。

ご家族で決めていただくお家の「コンセプト」

家事動線の改善は、リノベーションを行い、
建物に手を加えることで、
機能的に解決することができます。


ところが、
今後、お家をどのように使っていきたいのか、
に対するお応えは、ご家族で話し合って、
決めていただかなくてはなりません。

そこで、ご家族全員に参加していただき、
お家のコンセプトを作っていただきました。

「コンセプト」は、物事の基本的な考え方や
観点を表す言葉です。カタカナで使う場合、
一般的には「基本的な方向性」を指します。

具体的に言うと、
お家のコンセプト作りは、
ご家族の暮らし方について、ご家族全員で考え、
お家でどのように過ごしたいのか、
どのような雰囲気のお家にしたいのか、
相談して、決めていただくという作業になります。

例えば、

「光と風が通り抜ける吹き抜けのある家」
「家族全員が集まり一緒に過ごせるリビングの広い家」

など、ご家族によって、それぞれ違うコンセプトが

出来上がります。

暮らしを具体的にイメージする「マイホームの夢シート」

いきなり、コンセプトを作ってください、
というのは、ハードルが高いので、
その前段階として、ご記入いただく
「マイホームの夢シート」があります。

「マイホームの夢シート」は、
自分のイメージする暮らしや、
お家でやってみたいことなど、
ご家族がそれぞれ思うままに
箇条書きにして出していきます。


「マイホームの夢シート」には、
いろいろな夢や希望をなるべく具体的に
書いていただきます。


例えば、
「庭を手入れしてバラ園にしたい」
「お菓子作り教室を開きたい」
「ジャグジー付きのお風呂に入りたい」
「おうちカフェのようなリビングにしたい」
「絵を描く専用スペースのアトリエがほしい」
などです。

夢や希望を凝縮する「こんな家にするベスト10」

具体的な夢や希望、イメージをご家族全員が
出し切ったところで、次に登場するのが
「こんな家にするベスト10」というシートです。

たくさん出てきた夢や希望、イメージから、
10項目を選んで記入していただくシートが
「こんな家にするベスト10」です。

ご家族で話し合って、
ベスト10を決めていただきます。

「こんな家にするベスト10」が完成すると、
いよいよ、お家のコンセプト作りです。

「こんな家にするベスト10」を
総合的にまとめて、ギュッと凝縮したものが、
お家のコンセプトになり、
「住まいづくり」の基本ベースになります。

お家のコンセプトを作っていただいたら、
いよいよプランニングへと移行します。

プランニングを中止した理由と再開した理由

今回のお客様の場合は、
お家のコンセプト作りが完了したところで、
一旦終了とさせていただきました。

というのは、
新築を購入されたばかりで、リノベーションのための
新たな費用の捻出が難しいと
お客様が悩んでいらっしゃったからです。

お客様のお気持ちとしては、
今すぐ、リノベーションを行いたいと、
思われていましたが、

「しばらくは、現状のままで過ごしながら、
目標金額を設定して貯蓄をして、
ある程度の資金が準備できたら、
その時に改めてプランを立ててもよいと思うし、
あるいは、引っ越しを考えてもよいと思います。」
と、最後の打ち合わせとさせていただきました。

お客様とはそれっきりで、
連絡を取り合うこともありませんでした。

ところが、それから5年ほど経ったある日、
お客様が突然訪ねて来られました。

「プランニングを進めてほしい」とおっしゃり、
大型リノベーションを行うことになりました。

5年前に、ご家族で取り組んだ
「マイホームの夢シート」「こんな家にするベスト10」
「お家のコンセプト作り」を通じて、
自分たちが住みたい家を
シュミレーションすることができたため、
なるべく早くプランニングを再開したいと決心して、
貯蓄を頑張りました、と嬉しいご報告をいただきました。

リノベーションを成功させるために大切なことは、
「住まいづくり」を家族全員で考え、施工店任せでなく、
「自分たちが主役」になることです。

今回のお客様のケースは、
お家の住み心地の悪さから解放されたい
というところから始まりましたが、
結果的には、
ご家族が望む暮らしを叶えるための念願のお家を
ご家族の力で引き寄せられました。

今後も、「住まいづくり」や「プランニング」について
お話させていただきますので、
楽しみにしていただけると嬉しいです。

暮らし株式会社
住宅設計プランナーの片山友見でした。

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この記事を書いた人

片山 友見のアバター 片山 友見 暮らしを楽しむ家づくり*住宅設計プランナー

住宅設計プランナー歴35年!暮らしの悩みを住まい環境で解決する建築士。建設会社を営む両親のもと、家づくりが身近な環境で育ち宮大工工務店に嫁ぐ。自ら設計した検証住宅で住職一体の暮らしを続けながら、お客様の家の設計をする中で、住まいが性格や家族関係に与える大きな影響に着目。その経験を活かし住まいの悩みを解決するコンテンツを多数開発。書籍5冊を出版し住まいの情報発信にも力を入れている。

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